寺ネット・サンガ「坊コン」「こんな供養は○○だ!」 松本智量さんによるプチ法話「お盆」 供養 お盆

松本智量さんによるプチ法話「お盆」

お坊さんと直接語り合える場「坊コン」が7月23日(木)築地本願寺の聞法ホールにて開催されました。
東京都内では7月のお盆が終わったばかり。いよいよ来月からは月遅れのお盆になるということで、テーマは「供養にまつわる行事、お盆について」です。
今回は浄土真宗、日蓮宗、浄土宗、真言宗の各宗派のお坊さん5名が参加されました。同じ仏教でも各宗派によって、お盆に対する考え方や供養の仕方も違いがあるそうです。聴講者はもちろんですが、参加された僧侶の皆さんも他宗派のお盆のお話に興味津々で聞き入っていらっしゃいました。

本日のプチ法話は、八王子市延立寺住職(浄土真宗本願寺派)松本智量さん。供養の一大行事「お盆」にスポットを当てたお話です。

《松本智量(まつもとちりょう)さんのプチ法話のあらまし》

 皆さんが今日来てくださった、この築地本願寺は浄土真宗本願寺派のお寺です。浄土真宗はお盆に対する考え方が独特です。実は、浄土真宗では「浄土」は「あの世」ではないと考えます。「浄土」とは私たちのこの世界を丸ごと包んでいくださっている世界なのです。ですから、「浄土」はこの世と一緒にあるものですので、「浄土に行った」ということは「私達と四六時中一緒にいる」ということなんです。なので、3日間だけこの世に帰ってくるということもありません。浄土真宗では「お盆」は我が身を振り返る機会と捉えます。

お盆」の正式な名称は「盂蘭盆(うらぼん)」といいます。単に漢字をあてはめたものです。語源は2説あり、イランの言葉で「死者」を意味する「ウルヴァン」という言葉から来たという説。もう一つは、サンスクリット語で「ウランバナ」(=”逆さに吊るされたような苦しみ”という意味)から来たという説です。このウランバナは「仏説盂蘭盆教」というお経が元になった目連尊者(もくれんそんじゃ)の母の話が有名ですが、日本では、この「ウランバナ」説が有力なようです。


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○目連尊者のはなし

目連尊者が神通力で亡き母を探すと、餓鬼道で苦しむ母を見つけます。ご馳走が沢山あるが、手を伸ばした途端にそれらが炎となって消え失せる、それが永遠に続くのが餓鬼の世界。それを見た目連は何とかしたいとお釈迦様に訴えます。すると「お前の母はお前が可愛いばかりに、周りを押しのけてお前を育てたのではなかったか」と言われてしまいます。そして、母を助けたいなら、安居の最後の日(7月15日あたりのこと)に、修行を終えた僧たちに、三宝の教えに従って施しをするようにと言われます。目連は言われた通りに僧たちへ食事を施し供養しました。その甲斐あって母は救われ無事に往生できたということです。

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松本住職は「この話の中で「ウランバナ」=逆さに吊るされた苦しみ を味わっているのは誰でしょう?」と質問されました。
「お母さん?いいえ、お母さんではありません。実は、苦しんでいるのは目連自身なのです。逆さに吊るされた苦しみとは、逆さに吊るされた自分の状況を考えず、今の自分の苦しみは人のせいだと苦しみの原因を他に求めます。物事を逆さに見ているから苦しいんじゃないのか。というお釈迦様のお諭しによって、目連はそんな自分に気づいたのではないでしょうか。
物事を逆さに見て、敵を作って、あるいは苦しみを他に求めて人のせいにする。そういうあなたではないですか?ということを気づかせてくれるのが、お盆の行事の本来の意味であり、お釈迦様が言いたかったことは「多くの人に施し、供養をしなさい」ということなのです。これはお盆の時期に関わらずなのですが・・・」

あまりに身近な存在の「お盆」ですが、夏休み、帰郷する時期という意識の方も多いと思います。今回の松本住職のお話を伺って、改めて「お盆」の本来の意味を知り、果たして私は自分の苦しみを人のせいにしていないか?と考える機会となりました。今の自分があるのはご先祖様のお蔭、と感謝をして今年のお盆を過ごしてみたいと思いました。




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供養コンシェルジュ 樋口さんのお話

供養に対する総合相談窓口をしていらっしゃる供養コンシェルジュの樋口さん。お盆の時期によくある質問にはハウツーものと、そもそもやらなきゃいけないの?という2種類の質問に分かれるそうです。

○ハウツーものの質問例
・盆棚の作り方がわからない。
・スーパーに売っている飾り等をどのように置いたらいいのですか?
など。

○そもそもやらなきゃいけないの?という質問例
・そもそもお盆や四十九日はやらなければいけないのですか?
お盆や四十九日にはお坊さんを呼ばなければいけないの?
・飾り物は色々と揃えないといけないの?
など。

提灯に関する質問も多いのだそう。新盆(にいぼん)といって初めてお盆を行う方からの質問は特に多く、白提灯(しろちょうちん)や行灯の飾り方ひとつとっても・・・

・何処に掛ければいいのか?何処に置けばいいのか?
・いつ灯りをつけるのか?
・何日から吊るすか?
・終わったらどう処理をするのか? 
・色が付いてくるくる回る提灯について、自分が買うのか、親族に買ってもらうのか?
・必ず二つ買わなきゃいけないのか?
・4つになったら縁起が悪いのか?
・回らないといけないの?
・親族に買ってもらいたいと依頼してもいいのか。自分で買ってもいいのか?
など。
お盆の時期は、より細かい質問が多いのも特徴なのだそうです。
「地方によってもお盆の様相はだいぶ違いますし、宗派によっても飾り方に違いがあるのが難しいところです」とお話くださいました。

また、四十九日等にも、人が亡くなって初めて迎える行事なので質問が多いそう。
・お坊さんには電話していいのか
・お布施の表書きは御経料って書くのか?お布施って書くのか?
・お布施は何に入れればいいか。白い封筒?茶封筒?水引がついたもの?
・何時渡すの?終わった時?始まる前?
など。

樋口さんは「何のために四十九日やお盆をやるのか、それさえもわかっていない方も意外と多くいらっしゃいます。葬儀社さんからお坊さんを紹介されるだけの関係になっている昨今、お坊さん側からも、もっとわかりやすい言葉で話して頂きたい。お坊さんにもっと身近な存在になってほしいものです」と結びました。






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「坊コン」お盆談義と、お坊さんへの質問コーナー

お坊さんを交えて話が出来る貴重な機会です。今回は4つのグループに分かれてのグループディスカッション。各グループには必ずお坊さんが一人~二人入ります。普段は敷居が高くて話づらい僧侶の方と気軽に話せるのが『寺ネットサンガ』の「坊コン」の特徴です。

日本の「お盆」の特色や、地方によっての「お盆」の様々な違い、あるいは宗派による違い。日本の宗教の特徴等にも話が及んだグループもあったようです。グループディスカッションをすることで、参加されたお坊さんとの距離も縮まります。その為、その後の質疑応答のコーナーも和やかで質問しやすい雰囲気に。グループで話をした後は、初めて参加された方の多くに笑顔がみられました。


○お坊さんへの質問コーナー
日蓮宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗の各宗派のお坊さんが一列に並びます。女性僧侶の富永さんが、かぶっていたウィッグを取って剃髪姿を披露したことで、一気に楽しい和やかな雰囲気に。笑いの中で質疑応答が始まりました。一つの質問に対し、各宗派のお坊さんが一人一人お答えしてくださいます。

Q,各宗派による「お布施」の解釈は違いがあるのですか?

真言宗僧侶A,―――修行の一つ。「功徳を摘む」ということですので「対価」ではありません。
浄土宗僧侶A,―――対価ではありません。布施には仏の教えを説く=「法施」と、物を施す「財施」がありますが、お布施をすることで功徳を積むと考えます。私達僧侶は法施をすることがお布施となります。
日蓮宗A,―――対価ではありません。私のところではお檀家さんからいただいたお布施は一切中身を見ません。どのようなお布施を頂いても、私たちが出来る事を精一杯するという姿勢でいます。布施には「財施」「法施」「無畏施」の三種がありますが、お互いが精いっぱい出来る事をすることが大切だと思います。
日蓮宗A,―――お布施を喜捨と表現する事もあります。一番大事なものを喜んで出せますか?と考えるとわかりやすいと思います。受けとったお金に責任の重みを感じながら、自分が出来る事は何かと考えるようにしています。

Q,お盆には茄子で牛を作ったりや胡瓜で馬を作ったりしてお迎えの準備などをしますが、浄土真宗ではお盆に何を用意するのでしょうか?

A,浄土真宗ではお盆に用意しなければならないものは何もありません。普段と同じです。でも、やりたかったらやってもいいのです。やってはいけないという決まりはありません。

Q,お盆飾りについてはどのようにすれば?

A,精霊棚の上に敷いた真菰(まこも)の上で故人やご先祖様方が宴会をしていると思うとわかりやすいのではないでしょうか。家族で亡くなった方への想いを共有し、ご先祖と一緒に宴会をするようなつもりでお迎えすると良いと思います。

A,水の子や牛の茄子や馬の胡瓜などの他に、故人の好きだったものを飾ってもいいと思います。以前「さすがに生ものは無理ですよね」って話をしていたのですが、ある家でお刺身の広告の切り抜きが置いてあったのを見て感心したことがありました(笑)。面白いなあと思いました。

Q,お坊さんもお盆の時期は大変だと思うが面白い話はある?

A,家庭訪問に行くようなノリで楽しんで檀家さん回りをしています。暑い時は辛いけれど、冷たいおしぼりを出して頂くと、すごく有難くてうれしいです。

A,檀家さん回りの際に、お酒を頂く機会が多いがそれが大変な時があります。田舎では「まあまず一杯」から始まったりするので。

A,楽しいお盆をお迎えている家もあれば、辛い思いをしてお盆を迎えている家もあるので、それぞれの家の事情に合わせて訪問時にも気を使わなければなりません。それが大変と言えば大変ですね。

 
○まとめ
皆さん「お盆」について、何かしら素朴な疑問があったようでした。楽しいお坊さんたちの受け答えに笑いが絶えない質問コーナーとなりました。折しも築地本願寺では盆踊り準備の真っただ中。もうすぐ月遅れのお盆です。
猛暑の中、多くの方が参加された築地本願寺での「坊コン」。皆さん、より深く「お盆」の意味を知り、改めて供養とは何かを考える良い機会となったことと思います。

次回の「坊コン」は9月25日「お骨の行方」と題して行われる予定です。

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