仏教ひとまわりツアー 八王子の萌え寺?!「了法寺」 萌え寺と呼ばれて~「了法寺」 萌え寺 了法寺

萌え寺と呼ばれて~「了法寺」

仏教ひとまわりツアー第7段は「深遠(ディープ)な寺めぐり ~甚だ深い仏の教え、そーっとのぞいてみませんか?」をテーマにした、ちょっとユニークなお寺めぐりツアー。その第2回が2015年10月24日(土)、西八王子にある日蓮宗の松栄山了法寺にて開催されました。

了法寺は「萌え寺」として全国にその名を知られているお寺です。可愛い美少女アニメのキャラクターを看板に採用したことから、ネット世界で口コミで広がり、今や日本国内だけでなく海外からも注目されています。

了法寺がなぜ「萌え寺」と呼ばれるようになったのかという疑問符を、頭いっぱいに抱えながら実際にお寺に行ってみると・・・例の萌え系キャラの看板が!
その看板を横目に見ながら境内へ至る参道を歩きましたが、静かな落ち着いた佇まいの一見普通のお寺ではないですか。少し期待を裏切られた感に、こころもち残念に思いながらも・・・ご住職がもしかしたら?!などと想像を膨らませながら境内を入って行きました。
果たして!いやはや普通に袈裟を纏っておられるお坊様が、ニコニコと優しく出迎えてくださったのであります。


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萌え看板の由来~了法寺住職の話

了法寺は安土桃山時代以前の戦国時代から続くお寺で、古くは北条氏の加護を受け、江戸時代には八王子千人同心と隣接していたことから千人同心のお墓もあるという由緒あるお寺。また、八王子七福神の弁財天をお祀りしていることでも知られ、神仏習合の名残がある境内には立派な稲荷大明神が鎮座しています。

ご住職である中里日孝さんは、27年前に縁あって了法寺住職になりました。お寺の顔になる看板を作るにあたって、人目にわかりやすく印象に残るような看板を作りたいと思っていたところ、たまたま檀家さんに協力者がいて、その方のアイディアで「トロ美さん」の描いた美少女キャラの絵看板が出来たのだそうです。

ご住職も最初見た時にはビックリしたものの、トロ美さんの描いた絵は可愛らしく、いい印象だったので、これはこれで面白いのではないかなと思ったそうです。そして、取りあえず家族や檀家総代さんに相談をし、さらに他のお寺の住職さんにも相談したそうですが、誰からも反対の声があがることも無く、トントンと話は進みます。更には、おみくじを引いてみると大吉まで出て・・・それならと看板設置に踏み切りました。ところが、その看板が「萌え」だという噂がネットで流れ、いつしか口コミによって広がるようになっていったのだそうです。

中里住職は「みなさんにこの看板が受け入れてもらえるかが心配でしたし、看板に対する批判の声が上がるのも覚悟していました。でも、ほとんど批判はありませんでした。テレビの報道番組の取材や新聞等からも取材依頼が相次ぎましたが、直接的な批判の電話があったのは2件程でした」と当時を振り返ってお話くださいました。

中里住職は、この看板をきっかけに、お寺の敷居が低くなったと感じてくださった人が多くいたことが分かったとおっしゃいます。「萌え寺」として有名になったからこそ、仏教に興味を持つ若者もいることに気が付いたのだそう。お寺を訪問してくれる若者の中には、さまざまな悩みを抱えている人や、仏教について勉強している人もいたといいます。

「最近は仏教離れなどと言われていますが、実は何か心の拠り所を求めている若い人がいるのだということを実感しています。でも皆さん『お寺は敷居が高い』とおっしゃるんです。私達お寺側が門戸を開いたと思っていても、まだまだ一般には『敷居が高い』という思い込みがあるようです。もっともっとそういった双方のギャップを埋めることがこれから必要になってくるのではないでしょうか」とお話くださいました。



【写経体験】
しばしの休憩の後は写経の時間です。配られたのはトロ弁天様の絵がついた写経用紙。写経用紙までにもかわいい絵付きとは!お寺にて、萌え~な気分で写経をさせて頂きました。写経の間はご住職の読経を賜り、お焼香もさせて頂きました。



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了法寺にまつわる弁天様と宇賀神様

神仏習合が残る了法寺には、七福神の弁財天が祀られています。その弁財天をモデルに造られたのが美少女キャラのトロ弁天。トロ美さんが描いたので「トロ弁天様」なのだそうですが、その傍らには白蛇の化身の宇賀神、宇迦之御魂神(うがのみたまのかみ)が寄り添います。白蛇とは思えないほどの可愛らしい宇賀神様です。遠い昔から八王子の人々に信仰されてきた弁天様は、美少女キャラの絵になって現代に甦って来たのでしょう。こういった絵によって、神様の存在がより身近に感じられる気がします。

本堂の弁財天様のお前には、トロ弁天様のフィギュアが奉納されています。了法寺の取り組みに賛同して、フィギュア作家の宮川武さんが制作されたものです。大学時代に仏教彫刻を学んだ宮川さんによると、ちゃんと仏教彫刻として、下から見るように作られているのだそうです。近くで見させていただいたのですが、良く観ると可愛いだけでなく、何となく凛とした神々しさも持ち合わせているような気さえしてきました。このフィギュアのご奉納の際には、なんと400名近い若者が了法寺の本堂に入り、すし詰め状態で法要をされたそうです。


了法寺のホームページは公式の普通のホームページの他に、「看板のページ」というホームページがありますが、こちらは看板を描かれたトロ美さんがメインとなって作られているそうです。トロ弁天様の動画や歌も見られるようになっていますが、内容に関しては、トロ美さん側から、やりたいようにやってみたいと申し出られたため、お寺は一切関知していないそうです。お寺のホームページとしては何ともユニークです。それらすべての彼女の活動を許容なさっているご住職の懐の深さを感じました。

○まとめ
お釈迦様が始められた仏教を広めることを目的に、たまたま作ったアニメの看板が全国に知られるようになった了法寺。多くの若い方々が、かわいいアニメ看板を見る為にお寺に参拝するようになりました。お寺が敷居を低くすることで、若者が仏教に関心を持つきっかけになるのなら、この看板は住職の想いを伝える一助をしっかりと担っていることになります。
今後更に、色々な特色を持つユニークなお寺が増えたなら、お寺巡りも益々楽しくなっていくことでしょう。






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