建築法話① 玄関 玄関 入口

玄関

玄関」は、もとは仏教の用語です。
「玄」の文字には奥深いという意味があり、そこから玄関は、奥深く微妙な道理を極めるための入口、 転じて禅寺の入口、そして現在のように住居の出入口となったそうです。

もともと、日本の建物は湿気を呼び込まないように、床を高くしていました。そのため、玄関の段差は大きくなり、その段 差によって外と内の性格の違いが明確に区切られていました。
玄関で履物を脱ぎ、外の汚れをはらうことで、床は直接座って食事し、眠り、すべての生活が可能な場となります。道路の延長として、靴を履いて室内で生活する西洋の床とは大きな違いです。

また玄関は、お客様を迎え入れたり、家人を送り出したりする、人の気持ちを切り替える場所でもあります。
大きな段差は、相手を見下ろさないように、自然に膝と両手をついて挨拶する作法を生みました。それが、相手の緊張をほぐし、安心させることにもなります。

しかし、最近の日本の生活は、洋風化、便利さ優先、バリアフリーなどで玄関の段差は小さくなりました。
玄関の上がり下がりは楽になりましたが、段差の中に秘められていた大切なものが失われつつあるような気がします。
スリッパが必要なほど床が汚れ、正座をして挨拶するには低すぎて相手を見上げてしまう。若者は内と外の判別ができなくなり、地べたに座り込んでいます。快 適な生活が、先人が築いたさまざまな知恵を否定しているかのようです。

ひたすら快適さを求め続けるのではなく、仏さまの教えに照らした「ちょうどよい」ところ、それが仏道の修行です。
玄関=奥深い仏法の入口に立って、皆さんと一緒に修行にはげんでゆきたいと思います。

玄関について

玄関 入口

建築法話① 玄関玄関