建築法話⑧ 襖 襖 壁

や障子などの引き戸は、開け閉て(あけたて)や取り外しをすることで、部屋を広くしたり、風通しを良くしたりできる大変便利な可動のともいえます。
そこでの暮らしは、向う側の気配を感じるもので、お互いに気遣い、音を出さないようにしたり、気付かないふりをしたりする暗黙の了解を伴いました。
また、子供は悪いことをしたら注意され、親のおこないを見てまねしながら身につけるなど、家族の風通しを良くする役割も担っていました。

しかし、近代の西洋化の中で、とドアで囲われた個室を持つ家が数多くつくられ、による間取りは追いやられ、他者への気遣いの心は薄れ、家族の会話も減ってきました。
そして、個室で育った世代が親になり、その子供たち昨今の若者に至っては、地面に座り込む、電車内で化粧をする、ヘッドフォンステレオを大音量で聞くなど、目に見えないを自らめぐらすことで、他人の存在感を感じなくなっています。

の時代には、家族だけでなく地域の人からも、悪いことをすればすぐに注意される「世間さま」という意識もありました。今は下手に注意をして殴られかねない、世間さまさえ何も言えない時代です。
また自分自身の中に、人が見ていなくても仏さまが見ているという思いもあったはずです。の暮らしは、仏さまを身近に感じていた暮らしだといえるかもしれません。
の部屋で、仏さまに手を合わせていたご先祖さまを、思い起してみませんか。


襖について

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