建築法話⑫ 床の間 床の間 座敷

床の間

民俗学者の柳田国男氏は床の間の「床」は寝床の「床」であったのではないかと書いています。
むかしの座敷は板の間でした。座敷の背後には、主人や来客の寝室として畳を敷いた場所が設けられていました。やがて座敷に畳を敷き詰めるようになると、そこに蒲団を敷いて休むようになり、空いた空間に軸をかけたり、花を生けたりして床の間となったと説いています。
また、この説のほかにも様々な説がありますが、その一つに押板説があります。押板とは、一間幅の柱間に柱の太さ分、壁を凹ませ、絵画や掛け軸を掛けた装飾のための空間で、室町時代に生まれたといわれています。
仏画を掲げ、その前に三具足(香炉、花瓶、燭台)を置き、礼拝している絵巻物が残っています。

現代の住宅事情では、床の間を作るスペースはなく、あってもテレビや荷物が置かれていたり、一年中同じ人形や置物が飾りっぱなしであったりします。
また、せっかく花を生け、軸をかけた床の間に、訪問客が手荷物を置いたり、子どもが床框(かまち)に腰をおろしたりしているのを目にします。
床の間を飾り、客をもてなそうとした家人の気持ちをないがしろにするのは、自分の家に床の間がないからなのでしょうか。

正式な床の間がなくても、棚の上やテーブルの上などちょっとしたスペースに花や絵を飾るだけで、心を豊かにする安らぎの場が生まれるのでしょう。
そして、他者が自分のために、さりげなくもてなしてくれていることに気付く力も身につくのではないでしょうか。


床の間について

床の間 座敷

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