建築法話⑨ 屋根 屋根 合掌造

屋根

屋根とは、家屋の上にあるのに、なぜ「屋の根」と書くのでしょうか。
私は古代の竪穴住居を思い浮かべ、草葺きの屋根が大地に根付く家、文字通り「屋根」ではないかと思いました。合掌造の民家、古都の屋並み、お寺の大きな瓦屋根、皆大地に根付いたものに感じられます。
また、雨や日射を避けるための屋根があってこその家だから、「家の根本」という意味で「屋根」と書くのではないかとも考えました。屋根に守られて、ご先祖様たちは世界に誇る日本の文化を築いてきたのですね。

都会の高層ビルやマンション群の屋根は地上からは見えません。
住宅街のカラフルな工業製品の素材で飾られた屋根に、大地に根付いた家を感じることはできません。
そこに暮らす人々も、自分のことで精一杯で町は乱れる一方です。
屋根の存在が薄れ、文化を受け継ぐ家が崩壊し始めていることが感じられます。

合掌造屋根の葺替えには村人が総出で手伝い合う相互扶助の仕組みがあります。
現在、過疎化や高齢化のため、その機能は失われ、代わりに都会のボランティアがその労働を担っているという話も聞きます。
しかし、ボランティアにできるのは屋根の形を残すところまでです。

白川村の合掌造集落には、今でも村人が共同で屋根葺きを行なう「結(ゆい)」と、先祖に感謝する報恩講という行事が受け継がれているそうです。
人々が共に手を取り合って暮らし、神仏に手を合わせる「心が根付く家」=「屋根」の村だからこそ、世界遺産に指定されたのでしょう。

屋根について

屋根 合掌造

建築法話⑨ 屋根屋根