アンチエイジング 十二因縁

アンチエイジング

老化を抑え、いつまでも若々しくありたいと誰もが願うものです。
そんな世の中のニーズにこたえる形で医薬品や美容整形、トレーニングジムなどさまざまな「アンチエイジング」がブームです。
アンチエイジングを日本語に訳すと「坑老化」、老化に抗うということです。
気持ちの上で若々しくあり続け、健康寿命を維持するのは望ましいことですが、老いから逃れようと不自然に抗うと、どこかに齟齬が生じるのではないかと少し不安になります。

老衰死=枯れるように死ぬ

日本人は長寿になりました。
しかし、寝たきりや認知症など介護状態の期間は、欧米各国と比べて六年以上も長いそうです。
延命措置によって命を長らえたとしても、当事者は意識もなく「ただ時間が与えられているだけ」になるのも辛いことです。
病気の治療法を見出すという医学の立場からすると、老いて体の機能が衰えて死ぬというという「病気ではない現象」は研究の動機になりにくいそうです。
そのため、老衰によって食べられなくなり、水を飲めなくなり、やがて枯れるように死んでいく自然な死に方は「本当に苦しくないのか?」その答えは出ていないといいます。
仮に老衰死が苦しくないとしても、医師から「延命措置をしますか?」と問われた家族は、軽々に「NO」とは言えないでしょう。
少しでも長生きしてほしいと考える家族が、何もせずに衰え枯れていくのを見守るのは辛いことだと思います。
いつか当事者になるかもしれない私たちも、自分の体に起きる老衰の現象や自分の体に施される治療、そして自分のいのちについて、元気なときには真剣に考えられないものです。

十二因縁

「老・病・死」をいかに受け止めるかは仏教の大きなテーマです。
お釈迦さまは老死の苦しみはさまざまな因果関係よっておこるのだと「十二因縁」を説かれました。
①無知である(無明)が故に、②心が動き(行)、③識別し(識)、④ものが実体化し(名色)、⑤眼・耳・鼻・舌・身・意によって知覚され(六入)、⑥身体と接触し(触)、⑦感受し(受)、⑧渇愛し(愛)、⑨執着し(取)、⑩存在し(有)、⑪生まれ(生)、⑫老いて死にゆく(老死)
「無明」から「老死」に向かって迷いが生じる順序を知り、「老死」から逆方向に「無明」へと迷いを断じていけば苦しみは断ち切れると説かれたのです。
これを医療の現場にたとえると、老いて衰えて死ぬことを自然な現象だと受け入れ、生への執着や欲望も離れ、仏の智慧に近づいていくということでしょうか。
しかし、文字面で表現することができても、簡単に納得できるものではありません。
大切な人の死を経験し、故人を偲び、お題目を唱え亡き人の声を聴いて、いのちのつながりを感じ、死は終わりではないと知ることからはじめれば、死にたくないと思う「執着」や、長生きしてほしいと願う「渇愛」も薄れ、「無明」を断つことにつながっていくかもしれません。
いつしか自分も老いて、死を自然なものとして受け入れられるようにと日々お題目を唱え、修行に努めるしかないですね。

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