建築法話⑮ 井戸 井戸と地下水 地下水 井戸

井戸と地下水

地下水の流れ「水みち」は、自然にできるものと人工的につくられるものがあります。
井戸で水を汲み上げることによって地下水が動きます。
井戸を使い続けると地下水が通りやすい道ができて、地中で浄化される水の量が増します。
井戸は使えば使うほど良くなる」「たえず湧き続ける湧水がおいしい」といわれるのもそのためです。

しかし今は、飲み水はきれいなところから持ってくればいいと、水源は遠ざかり、何百キロも離れたダムに頼る状況です。
そして、足元の地下水にも、ダム建設地の自然環境にも無関心になっています。

井戸や湧水が水みちの出口なら、入口は雨水が浸透する地面です。
樹木林が伐採され、アスファルトにおおわれた都会の水の入口はふさがれています。
地下水と緑が減少し、ヒートアイランド化が進み、汚水と雨水の排除を押し付けられた川はしばしば氾濫します。
工場廃水などによる土壌汚染も深刻な問題になっています。

昔の人にとって井戸水や雨水は生活用水であり文化でした。
現代を生きる私たちは、水道の普及によって水に対する感性を失いかけています。
身近な水環境が失われ、水への気遣いを忘れ、使い放題、汚れはドブに捨てる。
人の心も荒廃します。

開経偈に「見聞觸知皆菩提に近づく」(見て聞いて触って知って皆悟りに近づく)とあります。
本物の自然や文化に触れる機会が減ると、感性が鈍くなり、悟りも遠ざかっていきます。
一滴の水から修行は始まります。

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永寿院の井戸

永寿院の本堂前の井戸は電動ポンプでくみ上げ、墓参用の蛇口や散水栓に地下水を利用しています。
これまで真夏の渇水期にも枯れたことはありません。

池上の台地は、粘土の不透水層の上に保水力の大きな関東ローム層が重なった状態で、数メートル掘れば地下水位に達します。
万両塚墓域内に井戸を掘った際も、5メートルほどで水が出てきました。

また、井戸水は災害時にも貴重です。
停電になっても水をくみ上げられるように、本堂前と万両塚の井戸には手押しポンプを設置しています。
保健所の検査では飲料用には不適格でしたが、生活用水としては十分活用できます。
除草剤を使用していないので、化学薬品による汚染もないと思います。

今年の夏は、首都圏の水源地の貯水量が少ないと心配されています。
都会の集中豪雨などでたまった地下水を上手に利用すれば、水道水の不足を補うこともできます。

永寿院にお参りに来た際は、井戸水でお墓を洗いながら、地下水の恵みについて思いを巡らせてみてください。



井戸と地下水について

地下水 井戸

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