グリーフケア コロナ禍の葬儀 コロナ禍

コロナ禍の葬儀

コロナ禍の影響で参列者数を抑えた「家族葬」や通夜を行なわない「一日葬」など、葬儀の小規模化・簡素化が進んでいます。
コロナ禍以前にも弔問客への接待や経済的負担の大きさを理由に、葬儀は簡素でよいという人が増えていました。また、長寿化が進み、社会との接点が薄れた高齢者の葬儀では弔問客が必然的に減っていました。コロナ禍はその傾向を後押しする結果となっています。
 
そのような流れの中で、葬儀が故人と社会的な別れの場から、「グリーフケア」の場へと変わっていくのではないかといわれています。

グリーフケアと葬儀

グリーフケア」とは、身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみを受け入れ、社会生活に戻れるようにと寄り添い支援することです。
子どもや親・配偶者・友人など身近な人を亡くすと、不眠・食欲不振・下痢・吐き気・頭痛などの身体的症状や、情緒不安定・無気力・集中力の低下・不安・怒り・悲しみ・孤独など心理的症状が様々な形で表れます。

しかし、遺された人は故人の死を乗り越え、新たな環境に適応していかなければなりません。
グリーフケアの場では、その過程に寄り添い、相手の感情や行動を認め、親身に話を聴く姿勢が重要だとされています。遺族は周囲に気を遣い無理に明るくふるまうこともあります。
そこに「元気になったね」と立ち直ったかのような声かけをすると相手を傷つけてしまうこともあります。
故人への想いや偲び方は人それぞれなので、遺族本人の想いを大切にして寄り添わなければなりません。

葬儀などの儀式にも様々なグリーフケアの効果があると考えられています。
家族葬が主流になると弔問客への接待や気遣いがない分、故人にゆっくりと向き合うことが出来るようになります。
故人の人生を見直したり、死者と生者という新たな関係を模索したりすることが、現実を受け入れていく一助となるでしょう。

半面、家族葬では、家庭の外の故人を知る機会が減ったり、家族以外の第三者による寄り添いの場が失われたりするなどの課題も生じます。
グリーフケアの場では、僧侶も読経や説教に加えて、いかに寄り添うことができるかが問われます。

檀家さんとの日々のお付き合いを大切にして、いざその方を送る際には生前のことを思い出しながら真摯におつとめします。
そして、遺された方と接する際には、お話を聴いたり、沈黙にお付き合いしたりしながら寄り添うよう心がけています。
 

逝く人がするグリーフケア

生前、遺される人たちのために出来るグリーフケアがあります。それは信仰生活を次世代に伝えておくことです。

日蓮聖人は、『上野殿御前御返事』というご遺文の中で、父を亡くした南条時光に、
「故親父は武士なりしかども、あながちに法華経を尊み給ひしかば、
臨終正念なりけるよしうけ給はりき。
その親の跡をつがせ給ひて、またこの経を御信用あれば、
故聖霊いかに草のかげにても喜びおぼすらん」
(貴殿の亡き父上は武士であり、熱心に法華経を信仰され、
安らかにご臨終を迎え霊山往詣されました。
親の跡を継ぎ、貴殿も法華経をご信仰されているので、
父上の聖霊はどれほど草葉の蔭で嬉しくお思いになっていることでしょうか)
と綴られています。

親子二代にわたる法華経信仰が来世の安穏につながるのだと伝える日蓮聖人のお言葉はグリーフケアそのものです。
私たちもあちら側に逝ったとき、遺された人とお題目を通してつながり、寄り添い合うことが出来るようにと、日々の修行に励みましょう。

まんだらエンディングノート

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