「スカラベ・サクレ」 ふんころがしの話 ふんころがしの話 スカラベ ふんころがし

ふんころがしの話

ふんころがし」の存在を初めて知ったきっかけは、『ファーブル昆虫記』です。
私は小さい頃から苦手なモノについて調べるという癖があり、虫や魚、それから犬の図鑑などをよく読みました。きっと、敵の弱点をつかむつもりだったのでしょう。かなり警戒心が強い子どもだったようです。

図鑑の写真を見るのが少し怖かったので、ちょうど手に取った本が『ファーブル昆虫記』だったのです。おそらく、子ども用に編集された本だったと思います。その本には「ふんころがし」の話が書かれており、挿絵もありました。
ふんころがし」という糞虫(ふんちゅう)の中にも種類がありまして、いわば糞虫の王さまとも呼ぶべき「スカラベ・サクレ」についてファーブルは詳細な記録を残しています。

子ども心に「ふんころがし」の話は衝撃的で、この虫が何者で、何のために動物の糞なんか転がしているんだろうと夢中になって読んだ記憶があります。今日はこの「ふんころがし」について、熱く語りたいと思います。

「スカラベ・サクレ」 ふんころがしの話 ふんころがしの話 スカラベ ふんころがし

スカラベ・サクレとは?

ファーブルの観察した「スカラベ・サクレ」は、後にスカラベの仲間の「ティフォンタマオシコガネ」という種類に分類されることがわかりました。スカラベ・サクレはティフォンタマオシコガネより大型で、かなり珍しい種類だったのです。

スカラベ・サクレとは?
スカラベ・サクレの写真を見てみますと、色や形は日本のカブトムシに似ており、カブトムシを真ん丸に縮小したような可愛らしい形をしています。糞虫の中でも、ただ糞を食糧にしている糞虫もおり、すべての糞虫が真ん丸にした糞を転がすわけではありません。
糞には糞虫たちが集まりますが、スカラベは彼らから離れ、巣から遠い距離をわざわざ糞を転がして、ゆっくりと食事をします。ここの部分も私の好きなポイントです。
ファーブルは、スカラベ・サクレが糞を転がし、ひとり静かに食事をする様子を「隠者」に喩えています。

スカラベの糞球の作り方
スカラベの転がす糞が真ん丸であることを、おそらく人間は雪だるまのように、転がすから丸くなるのだろうと考えると思います。ところが、スカラベは自分の食べる量を切り取って、その場で糞を動かすことなく、きれいな丸い形に整えます。しかも、その球体が美しい真ん丸の形に仕上がるのです。
熊手のように広がった頭部で糞を掘り起こしたり削ったりし、スカラベには全部で6本の脚がありますが、真ん中と後ろ脚でしっかりと糞を抱きかかえ、前脚でパタパタと叩いて形を整えます。

糞球を一生懸命作り、自分の静かな食堂へコロコロと転がしていくスカラベ・サクレの姿は、一度見てみたいものです。

「スカラベ・サクレ」 ふんころがしの話 ふんころがしの話 スカラベ ふんころがし

虫たちの奥深い世界

○エジプトの護符 スカラベ・サクレ
スカラベ・サクレの作り出す完璧な球体に、古代エジプト人たちは、1日1回転する天体の世界を感じ、スカラベが糞球を世界の動く方向、つまり太陽と同じく東から西へと転がしていると信じていました。
埋葬されるミイラの胸には、死者の復活を願うハヤブサやハゲワシの翼を持つスカラベの護符が置かれます。心臓には知性や記憶が残ると考えられており、心臓の上に置かれたスカラベは特にハート(心臓)・スカラベなどと呼ばれます。
現在でもお守りとして、スカラベモチーフはよく見かけます。

○虫たちの世界
スカラベが卵を産む際に作る梨の形の糞球や、琥珀色の蛹(さなぎ)のことなど、「ふんころがし」について語り出すとキリがありません。特に、羽化後に糞球から脱出して、スカラベが初めて日の光を浴びて恍惚としている場面などは、ファーブルでなくては観察できなかったスカラベの姿だと思います。

虫たちの世界も、奥深いものがあります。
よくよく考えてみますと、虫の姿をよく見かけるものの、ボーッとしている虫はいません。みんな、何かしら動いて働いているのです。虫は、もしかしたら生物の中で、一番働き者かもしれません。

中にはちょっと近寄りたくない虫たちもいますが、あたたかくなり、虫たちの小さな世界を楽しむには良い季節になりました。
今年は、どんな不思議な虫たちに出会えるか、楽しみです。

スカラベ・サクレ ふんころがしの話

スカラベ ふんころがし

「スカラベ・サクレ」 ふんころがしの話ふんころがしの話