もしもあの日に大地震が起こったら オリンピックの閉会式を見ながら オリンピック 地震

オリンピックの閉会式を見ながら

先月は4年に1度開かれる世界最大のスポーツの祭典「オリンピック競技大会」がブラジルのリオデジャネイロで開かれ、今月は同地で「パラリンピック大会」が行われます。

オリンピック大会で日本選手団は、世間の予想を遙かに超える史上最多41個のメダルを獲得。そしてその数字以上に、各選手の活躍が連日にわたり国民に感動をもたらしました。さらに国境の垣根を越え、各国の超一流の選手たちが競技に励む姿に世界中の人々が大きな賞賛を贈り無事日程を終えました。

しかし浮かれてばかりはいられないわけです。
次回2020年のオリンピック・パラリンピック大会は東京で開かれます。選手候補の皆さんは今回以上の期待を背負って競技や練習に励まれることでしょう。

オリンピック大会の閉会式では、安倍首相が世界的に有名な日本のゲームキャラクターに扮して会場に登場し、和服姿の小池都知事が次回開催地の代表として大きな五輪旗を受け取って笑顔とともに旗を振り、会場の拍手喝采を浴びていました。

しかしテレビ越しとはいえ、私はその光景を笑顔で見ることはできませんでした。
と言うのも東京オリンピック招致の時、うらおもてのない真心を行動であらわしていく「おもてなし」という言葉で東京を世界にアピールしたわけですが、私にはその言葉が、いまだにピンと来ていないからなんです。

もしもあの日に大地震が起こったら オリンピックの閉会式を見ながら オリンピック 地震

私たちの間違い

2011年に東日本大震災が発生した時、各地から多くの救援物資が送られたのはご存じの通りですが、池上市民大学の常任講師でもある環境アドバイザーの小野紀之先生は、当時被災地でのボランティア活動をする中、直後の都市部での大量消費により、救援物資が足りなくなった時があったとおっしゃっていました。

被災者の皆さんが連日恐怖と不安に耐えておられた中、都内や自分の町のスーパーマーケットでは、いつもあるはずのインスタント食品から日用品、必需品に至るまで、連日品切れ、品薄という状態が続いていたのを、私もこの目で見ています。
たしかに都内も大きく揺れましたが、電車が止まったくらいで急を要する大きな被害は多くなく、しかもコンビニやファーストフードのお店、ファミリーレストランですらいつも通りに営業されていたにもかかわらずです。

正直なところ私は、あさましいと感じてしまいました。
私たちの多くが身の回りの状況を見極める目を失っていたんだと思います。
私は千葉県の松戸市民ですが、私の知る限り、松戸市民や都民がこういう“前科”を作ってしまったという事実は消せないわけです。

今年に入って熊本で大きな地震が発生し甚大な被害が出ました。先月イタリアでも250人を超える犠牲者を出した大地震が発生しました。
首都圏では30年以内に70%の確率で直下型の大地震が起きるそうで、ということは目下のところ、今日も明日も、そして2020年の東京大会当日も大地震が起きる確率は70%と専門家は言っているわけです。地方や外国で起きた大地震は決して人ごとではなく、今この瞬間ここで起こっても不測の事態ではないということです。

日本は観光立国を世界にアピールして海外からの観光客の誘致をしていますが、特にオリンピック・パラリンピック大会では、200カ国くらいから選手のみならず観客や観光客もたくさんおいでになります。中には生涯に1度も地震を体験したことのない方々もいらっしゃるでしょう。
事実プロ野球でも、日本人なら気にもかけない程度の揺れなのに地震が怖かったという理由で、何人かの外国人選手がシーズン途中で帰国してしまった例がある通りです。

平時はともかく、もし本当に開催時やその前後の時期に大きな地震が起こってしまったら、どうなるんでしょう。
誰かを助けるためにもまず自分の身を守ることが先決ですが、果たして私たちは東日本大震災を“体験”した関東住まい私たちは、自国民のみならず外国からのお客さまたちにも「おもてなし」の心で手助けできるんでしょうか。

東京オリンピックを楽しむ覚悟

滝川クリステルさんが世界にアピールした「おもてなし」という言葉は、言うまでもなく彼女一人のものではありません。少なくとも都民の皆さん、ひいては日本国内に住む全員を代表して発せられた言葉です。世界に向けてそう言い、開催が決まっている以上、もはや「オレは、私は、そんなこと言っていない」は通りません。

起こっちゃうものは仕方がないというのは、ある程度地震に慣れている私たちの考えです。
そうでない方々のこと、そして私たちの過去の振る舞いを思い出すたび、都民でない者は水を差すなと言われるかもしれませんが、私は今でも東京でのオリンピック・パラリンピックは、大きいのが1度来てから手を挙げてもよかったのではと思っているくらいです。

それから東日本大震災の時、被災者の皆さんが足りないとわかっている食料を分け合いこらえているなどの様子から、日本人への賞賛と驚嘆をこめて「これだけの災害なのにどうして暴動が起きないのか」と報道した外国のマスコミがありました。
そう聞くと言い方に問題があるかも知れませんが、最悪の場合、きちんとおもてなししないと東北で起きなかった暴動が東京では起きるかも知れないということです。この最悪の事態を想定しつつもそうならないよう、暴動さえ封じ込める「おもてなし」を私たちが最大限に行うことで自分たちの暮らしを守り、外国からのお客さまを無事帰国の途につけるようにしなければならないわけです。

東京オリンピック開催まであと4年を切りました。
おそらく今日も選手候補の皆さんは大会出場を目指して猛練習していることでしょう。
私たちも、みんなそろって幸せにと導く仏さまから譲り受けた慈悲の心、すなわち日本人の人情をいざという時に存分に発揮させられるよう、日頃から誰にでも親切にできるようにしておく“練習”が必要なのではないでしょうか。

備えあれば憂い無し。出先でも避難所でも家の中でもしばらくしのげるくらいの準備とあわせ、今のうちからあの前科を帳消しにできるくらいの心と行動力をご一緒に目指していきたいと思っています。

2020年の東京オリンピックを楽しむには、地震国でもあるホスト国の国民としてこういう覚悟も必要と思うのは少々考えすぎだと思いますでしょうか。

東京オリンピックと地震国の心構えについて

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もしもあの日に大地震が起こったらオリンピックの閉会式を見ながら