建築法話⑩ 座敷 座敷 床の間

座敷

座敷というと、床の間のある畳を敷き詰めた接客の部屋を思い浮かべると思います。しかし、古い民家では囲炉裏のある板の間を座敷とよんでいました。
囲炉裏を囲んで人が集うとき、ゴザなどの座具を敷いて座りました。この[座]具を[敷]く部屋から、座敷とよばれるようになったといわれます。
やがて、座具としての畳が部屋全体に敷かれるようになりました。人が集まると、そこに座るひとの席次や作法といったものが生まれます。
上座を示す床の間や、付書院などの座敷飾りがつくられるようになり、現在の座敷の形になりました。

もともと床の間は書画を掛け、香華を供える神聖な場であり、付書院は読書や書き物をする知的作業の場です。
堅苦しく思われる立ち振る舞いも、相手をもてなす心が長い時間をかけて形になったものです。つまり座敷は日本人の心のありかたを形成する場でありました。
そして、仏壇や床の間にある座敷に客として通されると、その家の心のありようが感じられるのではないかと思います。

現在の私たちの住宅は、便利で快適になりましたが、ルールやモラルを守る意識や精神的な教養はとても薄っぺらになりました。
先祖代々受け継ぐものを捨て、自分ひとりの価値観によって動く人が増えると、世の中はますます暮らしにくくなります。
どうか家の中に、畳の部屋でなくても、床の間がなくてもかまいませんから、そこにいると大事な心が伝わる場=「座敷」をつくる努力をしてください。


座敷について

座敷 床の間

建築法話⑩ 座敷座敷