日本人の宗教観 日本人の国民性調査 信仰心 受持

日本人の国民性調査

国立研究開発法人「統計数理研究所」が、日本人のものの見方や考え方を調べるために行なっている「日本人の国民性調査」というものがあります。

その中に「宗教」に関する調査項目があります。
「宗教を信じるか」という設問に三割弱が「信じている」と答え、「宗教心は大切か」という設問に七割弱が「大切」と答え、「『あの世』を信じるか」という設問に四割が「信じる」と答え、「先祖を尊ぶか」という設問には六割強が「尊ぶ」と答えています。

日本人は「特定の宗教を信じてはいないが、宗教的な心は大切だ」と考え、初詣・お盆・クリスマスなど宗教的儀礼を重んじ、「あの世」や「先祖」は信仰とは離れた霊的なものだと感じているのだと考察できます。
・「親がそうだったから」と菩提寺に墓参をする。
・お寺との付き合いがなくても葬儀では僧侶にお経を読んでほしい。
・あの世・極楽・天国・山・海など多様な死者の世界を思い描く。
・亡くなった人がいつも見守っている気がする。
など、信仰は押し付けられたくないけれど、何となく宗教は大切だと考えている日本人は多いのではないでしょうか。

宗教的な意識を持たず宗教的な行動をとる「ゆるい信仰心」が日本人の宗教心の特徴といえるのではないかと思います。

変わる死の現場

高齢化・家族の変化・社会の変化に伴い、葬儀・墓・寺などの現場が大きく変わってきています。

昭和の葬儀は故人に面識のない親族の会社関係の人が大勢弔問に訪れていました。
遺族は接待に追われゆっくりと故人に向き合うこともできずにいました。
忙しさが悲しさを紛らわすという声もありましたが、泣けるときに泣いておかなければ喪失感から立ち直るきっかけを失いかねないともいわれます。

コロナ禍後、葬儀の小規模化に拍車がかかり、家族葬・一日葬が増えています。
本当に親しい人だけで送れる葬儀はゆっくり故人に向き合い、遺された人たちが命を見つめる大切な時間にもなっています。
「ゆるい信仰」を持つ日本人が自然な形で「あの世」や「いのち」について真剣に考える時間が持てるようになったともいえるでしょう。

しかし、葬儀でお経を読み、僧侶の法話を聞いて、信仰に目覚める人がどれほどいるでしょうか。
信仰が押し付けられるのを好まない日本人は、葬儀の場で宗教的な教義を求めているのではなく、宗教による救いや安心を求めています。
大切な人を喪って間もない人の心に染み入る仏の教えが届くような葬儀が増えることを願います。

受持

終活ブームの中で自分の死生観を見直そうと、宗教を学ぶ傾向も高まっています。
学問として教養として宗教を学ぶことは大切ですが、それが必ずしも信仰心につながるわけではありません。

信仰に欠かせないのは「受持」です。受持とは「受けたもつこと」、すなわち神仏の教えを心に刻み込み、その教えを日常生活の中に活かし続けることです。
「帰命」ともいい「南無」ともいいます。
「南無妙法蓮華経」と繰り返し唱えるのは、お釋迦さまの教えを信じ、実践し続けることを心に刻むためです。

はじめは親のまねをしながらでも、あるいは大切な人を亡くして心が揺れ動いたときからでもよいのです。
日々の生活の中でお題目を唱え、お釈迦さまの御心に沿うように生きようと努めていけば、「ゆるい信仰」から「受持」へと変わっていくと思います。
法華経を本当に「受持」したとき、「あの世」や「ご先祖さま」への想いも大きく変わっていることでしょう。

エンディングノート

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